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昭和ドロップ!

高校野球を語ろう! 槙原寛己さんは言う「高校野球をやっていたら大抵の理不尽は大丈夫ですから」/『昭和ドロップ!』

 

 定岡正二氏、篠塚和典氏、川口和久氏、槙原寛己氏の書籍『昭和ドロップ!』がベースボール・マガジン社から発売されました。昭和に生まれ育ち、昭和、平成に輝いた4人が、巨人長嶋茂雄、青春の多摩川ライフなど、あのころのプロ野球を愛あり笑いありでたっぷり語り合う1冊です! これは不定期で、その内容の一部を掲載していく連載です

「行けなかった人も力にしてるし、宝物にしてるよね」(定岡)


『昭和ドロップ!』表紙


 定岡正二さん、篠塚和典さん、槙原寛己さんで高校野球について語ってもらった章の一部である。

篠塚 マキの甲子園出場はセンバツだけだっけ。

槙原 はい。夏の愛知は工藤公康(元西武ほか)がいた愛工大名電高が出てます。僕らもナイター設備があったから練習は長かったですよ。

定岡 朝練はあった?

槙原 基本ないです。でも、朝練ってきついでしょうね。体もそうだけど、前の日に洗濯したユニフォームが乾かないでしょ。

定岡 高校野球は、練習だけじゃなく、そういう用具関係の大変さはあるよな。寮だと洗濯当番の下級生が乾燥機の取り合いで大変だったって話も聞くもんね。僕が覚えているのはボールかな。数が少ないから、1年生が練習用の古くてほどけたボールの縫い目を縫い直していた。マキのところはどうだった?

槙原 僕らも授業中に縫ってましたよ。

定岡 僕も授業中だった。1人2個担当で、「家でやれ」って言われるんだけど、帰ったらもう疲れてできないんだ。

──高校野球の思い出は甲子園の晴れ舞台だけじゃないんですね。

定岡 両方ですよ。もちろん、甲子園は僕の中の大事な思い出です。でも、それだけじゃないというのか、その過程もあるじゃないですか。若いときは旅をしろとか、苦労しろとか言うけど、今になると、そういうことがたくさん思い出される。

槙原 高校時代は、若くて体も耐えられるようにできてましたしね。それに、そのときに楽をしてると、そのあとの人生で歯をくいしばるときに食いしばれない気がします。野球やっていたら大体の理不尽は大丈夫ですから。

定岡 思うようにいかないことのほうが多いからね。あのときの苦しさや厳しさを経験していると、みんなプラスに考えられる。苦しかったけど、人生を豊かにしてくれるものでしたね。

槙原 ただ、この3人に共通しているのは、みんな甲子園に行けていることなんですよ。甲子園に行くと、全部そこで精算できるんです。苦労や努力が実って、すべていい思い出になるというか。

定岡 でもさ、行けなかった人も人生の中で力にしてるし、宝物にしてるよ。高校時代の話をすると、みんないきいきするもん。

槙原 うん、確かにそうですね。時々、球児の親御さんに話す機会があるんですけど、「甲子園に行くとかプロに行くなんて稀なこと。それより多感な時期にほかの道にそれないだけでもいいことだと思います。お父さん、お母さん、いろいろ大変なことも多いけど、我慢してやったらすごくいい教育だと思いますよ」と言っています。

定岡 どうです? マキもたまにはいいこと言うでしょ(笑)。
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